最初の旅館を開業して109年目を迎えた星野リゾートの星野さん=5月中旬
谷川岳に登る星野さん=2022年10月(提供)

 「星のや」「界」をはじめ国内外で67の施設を展開し、この春から谷川岳ロープウェイ(みなかみ町)を本格的に運営する星野リゾート(長野県軽井沢町)。代表の星野佳路さん(63)に、本県の印象や進出計画、観光産業の将来像を聞いた。

 ほしの・よしはる 1960年、長野県軽井沢町生まれ。米コーネル大ホテル経営大学院修士課程修了。日本の観光産業でいち早く運営特化戦略を採り、数々の観光地を再生してきたホテル・リゾート運営の第一人者

 ―コロナ禍前(2019年)の国内観光は需要の偏りがあったと捉え、インバウンド(訪日客)を東京や京都といったトップ10以外の30県(本県を含む)に向かわせることや、自然観光の強化の必要性を説いている。この考えを前提に本県の評価を。

 日本には28兆円の観光消費がありますが、うち22兆円は国内にいる人による国内観光費です。国内に強くないのに、インバウンドだけ強くすることは、私は難しいと考えます。「インバウンドの時代」だからといって、30県がいきなりインバウンドの取り込みを目指すのは無理です。

 (群馬の)目の前には東京という世界でも最大規模の市場があります。この人たちに支持されない場所がインバウンドに支持されるわけがないというのが、私の感覚です。だから群馬の観光地も、まずはどう国内の観光客に来てもらうか。国内の競合観光地にしっかり勝ち抜く。その先にインバウンドは見えてきます。

 ―本県は「首都圏からの近さ」「自然」「温泉」をよくキーワードにする。

 それぞれの地域は競争しています。東京という日本を一番よく知る巨大市場の視点で考えてみましょう。他県と比べ群馬はどうか。温泉は静岡、自然観光は長野、ワインのような文化観光は山梨に勝てていない状況だと感じます。ここが本当の問題で、そこを解決していくことが今、群馬にとって最も大切でしょう。

 ―何が必要か。

 競争する意識です。

 資源はいっぱいあるでしょう。温泉、文化、歴史。私は昨シーズン、国内外で71日間スキーを滑りましたが、群馬の雪質はとても良い。それらのポテンシャルを活用し、どうやったら長野、山梨、神奈川、静岡に勝てるか。東京周辺は競合の観光県がひしめき、箱根なんか圧倒的に強いわけですが、そこにはまだまだ、群馬は勝てていません。

 ―本県はよく「PRが下手」と指摘される。

 PRだけの問題ではありません。魅力づくりもこれからの開発の在り方もそうですが、県全体としての目標なくして良い方向には向かわない。目標の立て方として「昨年は何人来た」といった自分の県だけの発想ではなく、競合に、質的にどうやって勝つか。観光は、調査すれば地域のブランド力がすぐに見えてきます。劣る部分に目標を設定し、克服するんだという県全体の取り組みがないと、アイデアが出てきません。...